実家で畑仕事を終えて、夕方すこし散歩した。
小学校までの通学路を歩いた。
子供の頃、商店街だった通りには、もうあの頃の面影はない。
おもちゃ屋や呉服屋、自転車屋、時計屋、金物屋……、みんな廃業してしまった。
町内に唯一あるスーパーは、この数年で品揃えが悪くなり、売り切れてもなかなか補充されないと母がこぼしていた。
商店街を抜けると、田んぼに囲まれた通学路は昔とさほど変わっていなかったが、学校はもうない。
学校だった場所は、製粉工場に変わっている。
その敷地の隅に、蒸気機関車の車輪が置かれていた。
私が小学生のとき、学校に寄贈されたものだ。
そばには廃校時の証に建てられた石碑があり、
「校窓(まど)あけて」と刻まれている。
校歌の二番の歌い出しだ。
校窓あけて、実り豊かに…
私の人生は実っているのだろうか。
故郷でなにかの役に立っているのだろうか。