帰り際に母が持たせてくれた漬物

3週間ぶりに実家に帰った。

月末にじゃがいもの植え付けをするため、今日はその準備で畑を鋤いてガンギを切る。

数年前から私の仕事になっている。

父も母も歳をとった。

手押しの耕耘機を何度も転回させる体力はないのだ。

畑仕事の手伝いを始めた頃は、草刈りしかできなかった。

今も作物のことは分からないが、他のことも多少はできるようになった。

体力仕事は自分にしかできなが、畑には親にしか分からないことの方が多い。

去年の秋から、銀杏の木に実が付かなくなった。

「この近くにあった銀杏の木が切られたからだ」父が言う。

銀杏の木は雄と雌があり、その両方がないと実を付けないと、初めて知った。

雄の木は実がならないから切られてしまった。

おかげでうちの畑の木にも実がならない。

自然界では当たり前のことなのに、田舎から離れて暮らしていると分からない。

銀杏のことだけでなく、野菜の育て方も知っておきたい。

両親が元気なうちに、できるだけたくさん。

 

帰り際に母が、漬物を持たせてくれた。

実家に帰ったら、何はなくとも漬物を食べる。

自分が漬けたものとは比べ物にならないくらいおいしい。

しっかり漬けてあるから日持ちもする。ありがたい。

父も母も、その漬物は硬すぎると言う。

昔から変わらない漬物の味と、少しづつ歳をとっていく両親。

私もまた、一日ずつ老いてゆく。

生きている間に、どこまで行けるだろう。

それにしても、漬物がおいしい。

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。

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