毎年2月に、三原市久井町の久井稲生神社で裸祭りが行われていた。
裸祭りは、岡山・西大寺が有名だが、久井の祭りも百年以上の歴史がある、地域の大切な祭りだ。
久井の男たちにとっては、少年から大人への登竜門のような神事なのだろう。
田舎の祭りだが、裸祭りそのものが珍しいこともあり、カメラマンもたくさんやって来る。
慣れないうちはどこで撮ればいいのか分からないし、普段は夜の撮影をしないので、設定も試行錯誤だ。
二回目の挑戦も、前回が一年前なのでうろ覚えの記憶を頼りに(しかもたいてい間違っている)、またも迷いながら撮影する。
何年か通ううちに、少しずつ要領が分かってくる。
だが他の誰かとは違う、自分らしい写真を撮ろうと思えば、これもまた悩ましい。
神事、祭りの写真は先達が多く、作品的に「おいしい」アングルというのもだいたい決まっているのか、猛者たちが早くから場所取りする一角がある。
実際、作例のような写真はそこが一番きれいに撮れるのだろう。
でもそんな写真を撮っても面白くない。
同じ瞬間を撮るとしても、人とは違った撮り方をしたい。
「今年はこうしてみよう」と、事前にプランを練ることができるようになったのが二年前、令和二年の裸祭りだった。
反省点はあるが、1枚は狙い通りの写真が撮れた。
次はさらに工夫をしてみようと思っていたが、コロナの影響で2年続けて祭りは中止になった。
人が集まる、「密」になる行事はこれからどうなるのだろうか。
何年か我慢すれば、再開できるのだろうか。
新しい神事の形ができるのかもしれない。
ウイルスの今後の変異次第で最後になるかもしれない祭りの写真を見ると、複雑な気持ちになる。