写真クラブの例会。
合評会への提出作品が多く、先生は上機嫌だった。
さらに機嫌を良くしたのが、振り切った作品が多かったこと。
いわゆる「作例」のような写真は少なく、「なぜこれを撮ったのだろう」と思わせるものが多かった。
見る側が「ああこれね」と理解して隣の写真に移るのではなく、
足を止めてその場で考えるような作品だ。
それを先生は、こう喩えた。
コートの向こうにいる相手に向かってボールを打つのではなく、
壁に思い切りぶつけたボールの跳ね返りを、相手がどう受け止めるか、打ち返してくるか。
そこには相手がどう思うかという視点はない。
あくまで撮影者の視点のみで作られた世界が壁に投影され、
バウンドしたものが受け手に届く。
だれが、どんな角度で見るのかを想定するのではなく、作品に自己を投影する。
「自分がいいと思ったものを撮る。見せる」ということだ。
仕事での成果物は、相手から求められたものを納品する。
誰が見ても理解できる「商品」であり、そこに自己表現はない。
プライベートで撮るものは違う。
写真を通して、自分自身の思考や精神状態、ときに生き方を表現している。
それを言い換えると、一つ一つが「心象風景」なのかもしれない。
私の心を映し出す写真。
誰かの模倣ではなく、誰かに気に入られるためのものでもなく、
自分の心を映し出す鏡のような写真を撮っていきたい。
広島のライター&カメラマン
ぶるぼん企画室
代表 堀行丈治
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