音楽が好きだった。過去形だ。今でも仕事中はラジオやYoutubeを流しているし、音楽を聴かないわけではない。
だが、まだ知らぬミュージシャンやバンドを発掘しようとか、誰某の新譜が出たら買おうとか、そういった熱がなくなった。
数千枚あったレコード盤やCDは全て手放した。
いちばん熱心に聞いていたのは大学生の頃だ。
通学路には街のレコード屋(当時はすでに大半がレコードからCDに変わっていた)があり、電車で30分も移動すれば輸入レコード店があり、稼いだアルバイト代を遠慮なく音楽に注ぎ込んでいた。
欲しいとものが買えるという喜びは、この頃初めて覚えた。
大学は横浜にあったので、首都圏のコンサートにも行けた。
「JAPAN TOUR」といいながら、東京と大阪の2か所でしか公演しない外タレは多かったので、関東住みのメリットを享受できた。
OZZY OSBOURNE、AEROSMITH、DEF LEPPARD、DOKKEN、WHITESNAKE、TESLA、GUNS `N ‘ROSES、PINK FLOYD……
ここに書ききれないくらいたくさんのライブを観た。
1990年、大学卒業と同時に広島に帰ってきた。
その頃から少しずつ、音楽への熱が冷めていたのかもしれない。
知人のバンドに入れてもらい、音楽活動はしていたものの、「聴く」という意欲が少しずつ落ちてきた。
90年以降の音楽シーンには疎くなった。この20年では、レディーガガぐらいしか知らない。
ラジオでかかる曲は抵抗なく耳に入るのだが、それを誰が歌っている何という曲なのかまで関心が及ばない。
ただし70年代、80年代の曲が流れると過剰に反応してしまう。
子供の頃は「懐メロ」を好む中高年の気持ちが理解できなかったが、今は分かる。
若い頃に聴いていた音楽は、きっとその人の遺伝情報みたいに体の中に染み込んでいるのだろう。
忘れていても、曲が流れると反応してしまう。
あの頃の風景が目に浮かぶ。
やっぱり音楽っていいな。
今夜はこの曲を聴いて寝よう。