ビーフシチュー

 

今日の昼食は簡単に済ませようと思い、牛丼店で並盛を食べていた。

カウンターの斜め向かいに、白髪の男性と中年の男性が並んで食事をしていた。

おそらく父親と食事に来た息子さんだと思い、

父が生きていた頃に丸亀製麺に行ったときの記憶が蘇ってきた。

親と一緒に外食することが滅多になかったので、私にとってうれしい体験だったが

父もテレビCMで興味をそそられた丸亀製麺に初めて行くことができて満足そうだった。

親と一緒に外食をするのは楽しい。たとえそれが高級店でなくても。

丸亀製麺でも牛丼屋でも、サイゼリヤでもいい。

黙々とビーフシチュー定食を食べている父子を見て、自分も温かい気持ちになれた。

ところがしばらくすると、お父さんが食べるのをやめて、遠くを見ている。

口に合わなかったのかと思ったら、直後に突っ伏してしまった。

息子さんが介抱していたが、お父さんの顔から血の気が引いて土色になっている。

人生で初めて119番で救急車の出動を要請した。

救急車を待っている間、かすかに息があるような感じだったが

救急隊が到着した時には脈も呼吸も止まっていた。

心肺蘇生で脈が復活したと聞いたときは心底安心した。

自力での呼吸ができないということで、人工呼吸器を装着して病院に搬送された。

どうにか一命をとりとめることができて

楽しい食事の場が最後にならなくてよかった。

救急隊員の話を横で聞いた限りでは、

食べ物がのどに詰まって呼吸ができなくなったことが原因のようだ。

ビーフシチューがすごくおいいそうだったので、気持ちがはやったのかもしれない。

私の牛丼と味噌汁は冷めてしまって、お店の人が取り替えましょうかと言ってくれたけど

捨てるのはもったいないからそのままいただいた。

とりあえず最悪の事態にはならなかったけど、

「救急車を呼んでもらえますか」と言われたとき

「自分が呼んでいいのだろうか、店から連絡すべきではないだろうか」

と10秒ぐらいためらってしまったことが悔やまれる。

結局は店の人に「呼んでもらえませんか」と言われて私が電話したのだが

迷わず電話していれば、処置がもう少し早くできただろう。

何気ない食事の場面にも危険が隠れていること。

いざというときは迷わず行動すること。

この二つが身に染みて分かった。

 

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。

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