三越の仏事用包装紙

 

近頃はショッピングセンターやアウトレットに押され、

デパートは影が薄くなった。

広島市内では天満屋が八丁堀、アルパーク、緑井と3店舗全て撤退し、

そごうは新館を閉店する。

島根県では一畑百貨店が来年1月に閉店し、

“デパートゼロ県”になるという。

私もデパートを利用する機会がほとんどないのだが、

今日は母のおつかいで、三越にお菓子を買いに行った。

三越あるいはデパートで、という指定はなかったので、

路面店の菓子店で買おうと思っていたのだが、

たまたま今日の取材先が三越のすぐ近くだった。

菓子店のショーケースを眺めながら地階を一回り。

気になる洋菓子店に戻ると、店員さんが商品説明をしてくれた。

接客というものを、久しぶりに体験した。

「これがほしい」と決まっていないときの接客は嫌なものだが

今日は菓子折りを買うという目的があったので、受け入れられた。

他店と比較するようなものでもないので、

予算と店員さんの雰囲気で購入を決める。

寺へのお礼に使うと伝えると、仏事用の熨斗を用意してくれた。

プリンターの文字だけど、ちゃんと薄墨色になっている。

包装紙も手提げ袋も仏事用がある。

それだけのことなのだけれど、

丁寧な態度と言葉遣い、こちらの事情をすぐに理解してくれる思慮深さなど

求めているものにぴったりの買い物ができた気がした。

菓子もきっとおいしいと思うが、接客だけでじゅうぶんに価値があった。

ずいぶん長い間忘れていたけど、デパートで買い物をすると幸せな気持ちになる。

物質面でも精神面でも満足した一日になった。

 

 

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。