集会所「下徳良コミュニティーホーム」

 

昨秋、肝細胞がんと診断されて治療を続けていた父が一昨日旅立った。

昨日の通夜、今日の像義と、弔問に来てくれた人たちから父の思い出を聞かせてもらった。

共通しているのは

よく酒を飲む。

話し好きで声が大きい。

地域の世話が好き。

という人物像だった。

家族の私たちから見れば

行事の度に大酒を飲んで酔っ払って、最後までそこにいる。

遠くにいてもいるのが分かるくらいうるさい。

思ったことは何でも遠慮なしに言う。

といった感じなので、母はいろいろと大変だった。

そして、せっかちな人だった。

待てない、待たない。

とにかく先へ先へ行きたがる。

遺影の写真は数年前から用意していた。

そして、自分が死んだときの葬儀についても、母に伝えてあった。

曰く、葬式は集会所で行う。

 

集会所は、以前は葬儀でよく使われていた。

しかし、家族葬が普及したことやコロナ禍、町内に葬儀場ができたことなどが重なり、

葬儀では数年使われていなかった。

運営維持費は住民が均等割りで負担するため、取り壊ししたいという意見が多くなった。

父や母は、残しておきたいという少数派。

当然、自分の葬儀も集会所でしたいと希望していた。

その旨を葬儀社や講中の人に伝えると、皆さん快諾してくれた。

昨日は朝から近所の人が草刈りをしてくれて、

今朝は7時半に帳場を開けてくれた。

誰もがしばらく経験していないことだったが、父のために多くの人が汗を流してくれた。

私が思っている以上に、父が地域で愛されていたのだと知った。

 

近隣で葬儀があったとき、自宅から集会所への出棺では、

以前はいつもうちの軽トラで運んでいたそうだ。

数年前、80を過ぎて免許の更新をした後、こともあろうに新車を買った父。

自らの葬儀では、その新しい軽トラで棺を運んでほしいとも言い残していた。

「それも叶えてあげたい」と母が言う。

通常は霊柩車が家に迎えに来るのだが、葬儀社は父のプランを尊重してくれた。

かくして9月11日の午後、雨の中で洗車するという、ちょっと意味が分からないことをした。

泥はねだらけの軽トラは新車同然に白くなって、今日父を載せてあげることができた。

 

父がこの世を去って丸二日。

家族葬とアナウンスしていたのに、驚くほど多くの人が訪ねてきてくれた。

この地で親がしてきたことを碌に知らない自分が少々情けなくも思えるが、

たくさんの人が父のことを思って動いてくれたことは、本当にうれしい。

恩返し、できるのだろうか。いや、しなくては。

 

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。