スマホの写真フォルダを開くと
「あれから4年」
という文言とともに1枚の画像が表示された。
4年前の8月30日、私はデリーにいたのだった。
初めて訪れるインド。
空港の壁が面白くて撮ったのだった。
インドに行ったことは覚えていても、それが2019年の8月30日だったということは意識していない。
スマホの通知がなければ「あれは4年も前だったのか」と思うこともないだろう。
数年前はスケジュールを手帳に書き込んでいたが、
書き漏れがあったり、見たい時に手元に手帳がなかったりということがあり
スマホのカレンダーアプリに変えた。
PCからでもスマホからでも、入力すれば同期してくれる。
紙の手帳に書き込んで、壁のカレンダーに書き込んで、ついでにスマホにも入れて……
とやっていた頃が信じられない。
年齢相応、いやそれ以上に記憶力は怪しくなっているのだが、
ことスケジュールに関しては(入力さえしていれば)忘れることがない。
スマホを見るのを忘れることが唯一のリスクだ。
大学生の頃は、何でも記憶していた。
友人の電話番号は何人分を記憶していただろうか。
手帳の番号を見てかけた記憶がない。
携帯電話が普及して自分も所有すると、番号を覚えなくなった。
いま、空で言える電話番号はきっと自宅と実家ぐらいだ。
何度もかけているけど、市役所の代表番号さえも覚えていない。
だけど、それが不便なことではなくなった。
すべてスマホが解決してくれる。
登録していない店の電話番号も、すぐ見つかる。
ここまでスマホに依存していると、いつか困るような気がするが、
今さら自力で記憶するなんて無理だ。
でも日付はともかく、何があったのかという「出来事」は覚えている。
人の顔と名前は少々怪しい。
名刺管理アプリのせいにしておく。