西日本豪雨の被災地

 

1年半ぶりに、小説塾で作品批評を受けた。

今回は原稿用紙換算で53枚。

過去3回の小説は27枚、27枚、20枚と、まさに「短編」だったので、

「次回は50枚の作品を書いてみなさい」と先生から課題を与えられていた。

 

50枚も短編の枚数だとは思うが、

過去に50枚以上書いたことは一度しかない。

どんな世界で何をテーマに書けばいいのか、しばらく悩んだ。

しかし、アイデアが何一つ湧いてこなかった。

 

以前、文学学校の質疑応答で先生が

「全て出し切って書くことがなくなったときが、成長したとき」

と言っていたが、半年経っても見つからない。

これが成長と言えるのだろうか。

 

過去の経験に当てはめて

「締め切りを設定すれば書ける」

と期待を抱き、およそ一年前に今年の5月に作品提出、6月に批評会の予約をした。

 

果たして、今年に入っても私の中に湧いてくるものはなかった。

季節は冬から春になり、焦っている自分を意識するようになったが、

「これ」という題材に出会わない。

だが、過去作品を推敲して出すようなことはしたくない。

 

そんな私に変化が起きたのは3月23日の未明だった。

午前3時50分、災害復旧ボランティアのシーンが夢に出てきた。

布団の中でスマホを手に取り、その場面をnoteの下書きに書き込んだ。

しかし、その場面をどう生かせばいいのかは見えていなかった。

結局すぐには執筆に入ることができず、筋立てを考えるのに1か月以上の時を要した。

 

執筆開始は5月2日。三部構成の小説にすることを決めて書き進めた。

20枚弱の短編3本と思えば、短い時間でも書けると信じて。

できるだけ感情的な言葉は使わず、抑えた表現でも物語の山場を作りたい。

そう思いながら書き上げた小説は、山場らしい山場がない薄味の作品になった。

提出日の2日前のことだった。

 

推敲の時間はほとんどなく、提出の直前にミスに気づいたこともあり、この一か月は暗い気持ちだった。

作品批評を聞くのは怖かったが、今後推敲するときの参考になればと思い、開き直って聞いた。

予想通りの突っ込みもたくさんあり、予想外の指摘もあった。

好意的に読んでくれた人もいた。

面白いのは、10人の批評者全員、指摘が重複していなかったこと。

これまでの批評会では何人かの所感が一致、または非常に似ていることが多く

「●●さんもおっしゃっていたのですが」「言いたいことはもう言われてしまったのですが」

という前置きがよく聞かれていたのだが、

今日は同じような感想、批評の人がいなかった。

 

評価が割れすぎなのか、読み手によって受け取り方が変わるのか。

表現を過度に盛らず、薄味になったことで、読み手が解釈する自由度が上がったのだろうか。

そのことが小説を書く者にとって良いことか悪いことかは別として

とても面白い現象だと思った。

 

写真の先生なら「100人の中に1人でも気に入ってくれる人がいたらいい」と言ってくれるが、

小説はどうだろうか。

私にとっては楽しい時間だった。

 

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。