相変わらず入浴中に本を読む。
その中の一冊は『人間臨終図鑑』(山田風太郎)。
読み始めて数ヶ月経つが、三冊掛け持ちで読んでいるのでペースが遅い。
他が一章読むのに時間がかかるので、この『図鑑』はつなぎの時間に読むため
読んでもせいぜい数ページ。
いまだに一巻の半分くらいだ。
今日読んだのは石田吉蔵なる人物の死に際の話。
割烹料理店の店主だった石田が女中と密通し、果てはその女に殺され、性器を切り取られるという
「阿部定事件」の被害者だった。
物語は石田と情婦「お加代」双方の視点が含まれていて、事件の異常さよりも二人の情愛に狂う様が印象的だ。
実在の事件を題材に、一つの作品に仕上げるというのはこういうことかと、
そのよどみなく流れる文体に感服した。
そして、猟奇的な人物としての認識しかなかった阿部定という女性の心情にも、少なからず共感した。
繰り返して読みたい「臨終」だった。