図書館の桜は五分咲きくらい

 

小説を書くための下調べをするために、図書館へ行った。

目当ての情報はなく、似たような本はあったがそちらでは情報不足。

先日写真の先生が薦めてくれた写真集『長い間』(金川晋吾)を閲覧しようと写真集コーナーに行くと

先生がいた。

挨拶をして、『長い間』を見にきた旨を告げる。

先生は「蔵書検索で”貸し出し可”になっているが、見当たらない」と言う。

確かに見る限りでは背表紙に『長い間』の文字がない。

そう思っていると、うっすらと『長い間』と型押しされた背表紙があった。

「これですね。見てみます」

と閲覧スペースに向かったが、先生も見たかったのだろうなと思うとちょっと申し訳ない。

いやいや、先生は先週2度も来館して見ていると言っていたし、私が先に見てもいいだろう。

というわけで、見る、解説を読む、再び見るということを繰り返すうちに、

年老いていくことの残酷さが伝わってきて、どんよりとした気持ちになって棚に本を戻した。

写真は素晴らしい。エピソードは読んでいて辛いものがあった。

図書館を出ようと歩いていると、別の棚に置かれた本が目に入った。

『あゝ荒野』(寺山修司・森山大道)

森山大道のプロフィールで度々目にする書名だった。

こんなところで見るとは・・・。

寺山修司が大人物であることは知っていても、著作には疎い。

『あゝ荒野』がどんな本なのかも知らなかったので、とりあえず冒頭を読んでみた。

面白い。

まず書き出しで、物語の世界に引き込まれる。

これはきっと、いい本に違いない。

そう確信して、借りて帰った。

帰り際に図書館を出るとき、先生を見かけた。

「どうじゃ、何とも言えん暗い気分になったじゃろう」

はい。とっても・・・

先生はこの時間、何を見た(読んだ)のだろう。

 

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。

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