東広島市高屋町の白市で年に一回、歌舞伎が上演されている。
その名も「白市歌舞伎」。
役者は皆、地元の人たちだ。
大人と子どもそれぞれに演目があり、大人が前座で子どもが後座を務める。
歌舞伎が始まったのは江戸時代のことだという。
いわゆる田舎歌舞伎が発展して、郷土芸能になったのだろう。
戦後に一度途絶えた歌舞伎が復活したのは30年前の1993年。
子ども歌舞伎は小学校が中心になって97年に始まり、今は和文化学習の一環でとして取り組まれている。
白市歌舞伎の存在を知ったのは、私が40歳の時。
当時所属していた東広島商工会議所青年部の会員H氏が、
地域活動として取り組んでいるという話を聞いたのが最初だった。
それから数年が過ぎ、東広島市の広報紙を受託し、「一校一和文化学習」をテーマに取材した。
その年に初めて、白市歌舞伎の上演を見た。
会場の高屋東小学校体育館は地元の人でいっぱいだった。
役者や主催者はもちろんだが、地域住民の歌舞伎への愛着も強い。
いい行事だなと思っていたが、コロナ禍でしばらく開催されなかった。
昨年復活したそうだが、見に行けず。
今年も午後は用事があったので、午前中の準備にお邪魔した。
会場の外にはキッチンカーが並び、テーブルと椅子もしつらえてある。
開演は午後1時なのに、けっこうな数の人が集って、すでににぎわっていた。
開場の2時間以上前だったが、祭りの日の朝のような、
気忙しくて心が弾むような雰囲気だった。
子ども歌舞伎を支える保護者や地域の人たちの熱意も、前回以上に感じた。
大人は中高年だけではなく、若い世代も積極的に参加している。
郷土芸能を継承していくのは大変だけど、みんな誇りに思っているから続けられるのだろう。
今日見た光景は、まぶしくてうらやましい世界だった。