年度替わりを前に、各自治体の入札案件が増える時季だと思う。
会社員時代は毎月2回、市役所の見積もり合わせ会場に足を運んで
売り上げになりそうな広報物を探しては入札に参加していた。
10年少々前のことなので、デフレ時代の末期。
民間市場でも、もうこれ以上安い値段なんてないくらいの価格が横行していた。
2段1/8の新聞広告が1万円で2回出せたり、半2段広告が月に10回も出て6万円だったりと
お金のない世の中を象徴するような広告(特に新聞広告)料金だった。
テレビでも閑散期には「50万で50本」を打ち出す局もあった。
受注しても、誰も儲からない仕事が増えていた。
自治体の入札はその最たるものだった。
印刷物の落札価格は、紙代とインク代にしかならないんじゃないかと思うほどの安値で
広告代理店が受けられる値段ではなかった。
その名残なのか、令和になっても驚くほどの安値を上限にしたコンペがある。
先日も、初参加を検討していた自治体広報誌のプロポーザル公告があった。
印刷会社に見積もりをお願いしたところ、印刷代だけで予算の上限近くに達してしまった。
企画料どころかデザイナーに払うページ制作費も捻出できそうにない。
発注者は、この仕事を受けた誰かが幸せになれると思っているのだろうか。
公務員の評価は、いかに前年よりお金を使わずに済ませるか、なのだろう。
何をするのかではなく、何を削ったか。
受注者に儲けさせないことが、公務員としての評価になる。
こうして地域の事業者は会社をたたみ、大手企業が請け負った仕事を
地元の非正規労働者が安い日給でこなしていく。
年末に、東京の企業から写真撮影の依頼があった。
スケジュールが合わないのでお断りしたが、その後、
カメラマンとして登録してほしいと依頼があった。
イベントにカメラマンを派遣する会社だった。
社名から察するに、大手小売業の子会社だ。
依頼案件が発生するごとにメールが届く。
興味本位でどんな案件なのか見ると、弊社だと半日拘束分にもならない発注額で1日拘束だ。
彼らは「仕事」を持っている。
仕事が、目先のお金が欲しいフォトグラファーは食いつくだろう。
その日の食い扶持にはなるのかもしれないが、家族を養ったり蓄財したりできる金額ではない。
こうして、撮影仕事の相場も、どんどん下がっていく。
岸田首相は、就任当初に掲げた「所得倍増」を「資産倍増」に修正した。
持っている奴は投資で増やせ。
持っていない奴の給料は上がらない。
こんなことがあっていいのだろうか。
投資でお金が増えるのもいいけど
働いて稼いで、そのお金で楽しいことをする。
そんな人生のほうが楽しい。
仕事は儲かってこそ価値がある。
お客さんに喜んでもらって、対価としてお金を受け取る。
自分も、喜ばせてくれる誰かにお金を払う。
それだけでいい。
ぶるぼん企画室
代表 堀行丈治
東広島市八本松南5-6-12コウセイビル202
TEL.082-401-1072 FAX.082-553-0556