オンラインツールの発達やテレワークの普及で、
地方のハンデが小さくなってきたと思っているが、
それでも決定的に足りないのが文化度だ。
久しぶりに東京に来て、それを実感した。
夕方に交流会があるほかは自由だったので、東京都現代美術館へ。
目当てはパフォーマー、サエボーグの展示だ。
ラバーで自作した生き物の造形に身を包んでのパフォーマンス。
一度見てみたいと思っていたら、なんと入場無料で観られるという。
会場には、涙を流した犬がいた。
弱々しく小刻みに動き、時に静止する。
その姿や動きを見ていると、なんだか自分の弱い部分を見ているような気がしてきた。
私も含め、しばしの間パフォーマンスに見入っていた観客は、いずれ会場を去る。
その瞬間、何とも言えない無情さをかんじてしまう。
犬の涙は、別れの涙なのか。
いつか別れが来ると知っての涙なのか。
時間にして30分ほどの滞在だったが、もっと見ていたいと思った。
サエボーグの後で、同じく無料の津田道子のビジュアルアートを見た。
予備知識もなく会場に入ったのだが、途中から完全にその映像世界に引き込まれた。
「人生はちょっと遅れてくる」の題名通りだ。
これは体験した者にしか分からない。説明もできない。
こんな衝撃的なアートが無料とは信じられない。
東京都民がうらやましい。
都内では有料無料、さまざまな展示会やイベントが行われている。
サエボーグも津田道子も、広島では市場規模が小さすぎるだろう。
大都市ならではの芸術的多様性を感じた。
その後、渋谷に移動してマキエマキの忖度ポスター展を鑑賞。
声が大きい一部の人たちの、エロに対する異常なまでの拒否反応が
表現者の手足を縛っている現状が分かる。
この危機感も、広島にいては分からない。
私は彼女の文章が好きなので、フォトエッセイを購入。
本にサインをもらった。
交流会で営業した後、久しぶりに銭湯へ行った。
古い建物だが、大切にされているお陰だろう。とてもきれいだ。
古びているのに、どこも壊れていない。
常連の老人の会話が自然と耳に入る。
ネイティブならではの、心地よい江戸なまり。
広島の人間からしたら、もうこれだけで立派な異文化体験だ。
天気はよくないが、夜風に吹かれながら散歩して宿に向かった。
明日は雨予報。
都会の雨はどんな景色を見せてくれるのか、楽しみにしている。