写真の師匠が、ことし傘寿を迎える。その記念に写真展をするということで、お手伝いをさせてもらっている。

今日は言うなれば、展示写真の二次選定。一度組んだ展示プランを先生が推敲して修正案を作成した。一次案と比較しての印象の違いや、ギャラリーでの配置などについて、私たちの意見も参考にしたいということで、参加させてもらった。

写真展は一つの小説、映画のような作品だ。テーマに沿って、起承転結なり序破急なり「その写真展ならではの」ストーリーがある。どこにクライマックスがあるのか、そこまでの道筋はどのように見せるのか。見終えた人が何かを感じ取れるような、作者の意図が必要だ。

単に「良い写真」と言われるような作品を並べればいいというものではないようだ。

一般に「良い」と言われる写真は、コンテストで入賞するようなもの、あるいはカメラメーカーのウェブサイトで作例として紹介されるようなものや、カメラ雑誌に投稿されるようなものだと思う。1枚で存在感があって、多くの人の目を引く写真。いわゆる主役級の写真だ。近年はSNSでの写真ファンのコミュニティに投稿されるものもそれに近い。

だが、写真家が写真展を企画するとなるとそうはいかない。全体で一つの物事を表現する。物語の始まりはどんなシーンなのか、その世界をどう広げていって、何を見せるのか、何を感じさせるのか。終幕までの道のりを描き、どのように閉じるのか。

2時間ほどの写真選定の間に、さまざまなことを感じた。これは、自分が今撮っている写真の残し方の参考にもなる。私が撮ってきたものを、改めてふるいにかけてみたい。

 

その後、先生と広島市内の美術館に写真展を見にいった。主役だらけの世界だった。お手本のような写真、似通った写真が壁一面に掲げられていた。あちこちに「●●賞」と札が付いた作品があったが、ここでもまた記憶に残る写真がなかった。

「写真の世界はいまだに昭和だ」という先生の言葉が一番心に残っている。

 

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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。