万年筆と便箋

 

弊社ライターとの会話中に、今年は暑中見舞いが一枚も届かなかった(出さなかった)という話になった。

昨年も0枚だった気がする。

2年前にコロナ禍が始まり、それを契機に企業間の暑中見舞いが激減した。

テレワーク、リモートワークが広がり、顔を合わせない相手が増えただから増えても良さそうな環境だったが、

時候のあいさつにかけるコストも削減対象にせねばならないほどの情勢だったのだと思う。

年賀状のやりとりも廃止する企業が増えた。

昨年末に買った年賀はがきが、未消化のまま数十枚残っている。

冷静に考えれば、はがきのやりとりはしなくても、毎日たくさんの人とメールやメッセージで交信している。

深夜から未明にかけての時間を除いて、曜日を問わずほぼ毎日、何らかのやりとりがある。

情報を得るのにも、伝えるのにも紙は使わない。

一昔前は、紙の温もりとか紙媒体の力とか、「紙情報>ネット情報」といった見方が強かったが

今は紙のメディアに触れる機会がほとんどない。

発信も電子化されたメディアばかりなので、キーを打つか画面をフリックするかが大半で、

ペンを持って字を書く時間がほとんどなくなった。

そんなこの頃だが、先日から贈り物をいただいたり、はがきでメッセージが届いたりと

手書きでお礼を述べたくなる出来事が続いた。

昨日、母が語った燕の旅立ちの話を聞いて、ある人のことも思い出した。

「手紙を書こう」

半月ぶりに万年筆を握り、はがき5枚と封書1通をしたためた。

書いている間、その人のことを思う。自分の心が、いつもより穏やかになっている。

その時間が好きだ。

他愛もない話題でもいい。

伝えたい人がいるのは幸せなことだと思う。

 

 

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代表 堀行丈治
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By ほりゆき

ぶるぼん企画室代表の堀行丈治(ほりゆきたけはる)です。取材、執筆、撮影、編集を生業としています。