最近観た映像作品の話。
アジアンドキュメンタリーズの最新配信作品「天国の傍で」(原題:ALMOST HEAVEN)を観た。
葬儀会社で納棺師を務める少女が主人公だ。
納棺師は望んでいた仕事ではないが、親に仕送りをするために働いている。
同世代の少年、ジンホワとコンビで当直にあたり、遺体洗浄や葬儀進行の研修を受けている。
深夜の遺体安置所は不気味なのだが、遺体がエレベーターで降ろされたり台車で運ばれたりする様は
どことなく無機質というか、葬儀も「作業」や「工程」が組み込まれた産業のように見える。
遺族とのやりとりも、双方ともビジネスライクな面が垣間見えて、
現代の中国を象徴しているようにも思う。
観ていて一番心を動かされたのが、彼らがごく普通の少年少女だということ。
現実的な少女と楽天的な少年。
シーンは仕事と日常が、同じくらいのボリュームで描かれていて、
多感な十代の心模様も伝わってくる。
気がつくと、どっぷりと感情移入してしまい、主人公インリンを心から応援している自分がいた。
葬儀会社という非日常なシチュエーションではあるが、
その他は特別なことをしているわけではなく、日常の喜怒哀楽を丁寧に描いている。
それだけで面白い。
小さな心の変化こそが、ヒューマニズムの醍醐味なのかもしれない。
広島のライター&カメラマン
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