最近読んだ小説の話。
文章はよどみなく、饒舌なのですらすら読める。
読み終わって数日経つと、ほとんど内容を覚えていない。
なぜなのか。
今思い当たることが一つ。
感情がない。
もちろん、主人公を含めた登場人物の心理描写は入っているのだが、
筆者が誰にも心を寄せていないような書き方。
主人公は「私」「俺」のようないわゆる“一人称”小説なのだが
「私」がどことなく私っぽくない。
”他人事”のように思えた。
これは自分が小説を書くときにも言えるのだが
筆者の視点や心情がどこにあるのかが曖昧なままだと、思いが読み手に伝わらない。
作り物とはいえ、リアリティが薄いと印象に残らない。
そのリアリティは、情景や心理の描写のほかに、筆者の感情も含まれると思った。
これからは「自分の小説は”他人事”になっていないか」をよくよく考えて書きたい。